プラダを着た悪魔のモデルといわれる、米ヴォーグ紙編集長、アナ・ウィンターを追ったドキュメンタリー。
いやーグレイスがいたからこそアナがいて、またその逆もしかり。
グレイスのセンスにはアナだって一目置いている、だからああいう関係が成り立つ。
19世紀の特集も、グレイスのセンスが光っていた。
さらっと言っていたけど、昔モデルでものすごく綺麗だったグレイスが、車の事故で顔も体もめちゃくちゃに。
整形手術を何度も受けたと言っていたが、途中どんな過程があったかわからないが、変に腐ったところもなく、ファッションへの情熱と、自分のやるべきことを淡々とやる姿勢、文句は文句でちゃんと表現、強くて思いやりもあってちゃめっけもあって、すごいなぁと思った。
アナは、みんなに認められてあんな風に仕事をこなしているけれど、たまに垣間見えるコンプレックスと、弱みを見せたくないからこその武装した強さ、でちょっと痛々しかった。
家族の話のとき「兄弟はみんな成功している。彼らはみんな私の仕事に対して「おもしろい仕事をしている」といつも言う。アミューズだと言う」と。「アミューズ」いう言葉を何度も使っていた。
あんなに成功しても、ある種のコンプレックスを抱えているのが伝わってきた。
娘も、法律家かなんかになりたがっていて、アナの意思を継ぐ気は毛頭ない。
娘に対して並々ならぬ愛情を注いでいるのも、外と内の顔がまるで違うのも、観ていてちょっとかわいそうになった。
しかし、あんなに真剣に仕事に向かっている人たちを見ていて、そんな情熱を注げることを仕事にするって、なんて素晴らしくて、でもなんて消耗するんだろう、というのが正直な感想。
わたしなら、あんな過酷な状況、幾ら好きでも無理かもしれない。
そこが、凡人と非凡人の違いなんだろうけど。
「ファッションが教えてくれること」2009/アメリカ
監督:R.J.カトラー
出演: アナ・ウインター、グレイス・コディントン