諏訪敦彦・イポリット・ジラルド 共同監督作品。
好きな監督の作品を観る時は、大きな楽しみとほんの少しの不安が入り混じった不思議な気持ちになる。
フランスに暮らす、日本人の母親とフランス人の父親を持つ少女ユキ。
突然、両親の離婚とそれに伴う日本への引越しを聞かされ、受け入れることができない。
親友のニナと今までもそしてこれからもずっと一緒にいるはずだったのに、現実という波は容赦なく多感なこの少女に迫ってくる。
諏訪監督の優しい眼差し、少女に寄り添うようなカメラ。
何気ない日常の1ページや、ふとした会話が、この優しい眼差しを通して見つめることによって、ほんとうに不思議なほどに胸に染みる。
「不完全な二人」の時も、順撮りや俳優に任せたダイアログでその空気感を表現することに成功していたが、今回も、少女の感性や場の雰囲気重視の中で撮影が進められていったことが伺える。
いろいろな事情を受け入れなければならないユキの気持ち、不安と苛立ちと子供への思いで混乱している母親の気持ち、娘と離れなければならない父親の気持ち、突然親友が去ってしまうニナの気持ち、、いろんな思いが交錯する中で、それぞれにそっと寄り添い、見つめる。
映画にはいろいろなタイプがある。展開や結末がばっちり決まっているもの、監督の強い主張が詰まっているもの、、
こんなにも優しくて、こんなにも主張ではなくて、こんなにも訴えかけてきて、何が起きたわけでもないのに気づけば自分がその寄り添う眼差しになり涙が出てくる。
私たちのほんのささやかなそれぞれの想いも、こうやって無数に存在して、ここそこで輝いているんだ、と優しい気持ちになる。