映画「不完全なふたり」

日本人監督、諏訪敦彦。オールフランスロケ、フランス人俳優、フランス語ダイアログによる映画。

15年連れ添った男女が別れる直前。
友人の結婚式に出席するために二人でパリを訪れ、同じ部屋で過ごす。

これは面白い映画を観た。
出演者含め、全員が意見を出し合い、即興で物語が作られる手法。
出演者のインタビューを見ると、「あの場面がもし最初に撮られていたら、きっと最初のシナリオ通り、結婚式のあとナタリー(元カノ)に再会した時、そのまま寝ていたと思う。」と。
でも実際はそうはならなかった。
順撮りによるニコラの心情がそうはならなかったからだ。
あーなんて面白い試みだろう。

そして男女の破滅的なあのやりとり。
恋愛における、あの何も生み出さない悲しい無意味な会話に窒息しそうになる。
何が解決か、何か悪いのか、何を直せばいいのか。
まったく見えないあの感じ。リアルすぎる。

ラストは意外だった。
でもいい意味で裏切られて、本当に普通にありえる結末なのだ。

あのラストシーンのあの感覚。
こうなることはどっかでわかっていたような。
わかっていて茶番をやっていたような。
紙一重で、別れることにも、続くことにもなり得る。
男と女とは、なんて不確かで、なんてあたたかいんだろう。

「不完全なふたり」とはいい邦題だ。
不完全は悪い意味ではない。そもそも完全なものなどないのだ。

「不完全なふたり」2006/日本、フランス
監督:諏訪敦彦