映画「息もできない」

自身も過去に問題を抱え、それを吐き出すためにこの映画を撮ったという韓国人監督、ヤン・イクチュン。
長編デビュー作にして、国内外で25もの賞を受賞。
まさに、魂の叫びというのが相応しい作品だ。

すさんだ家庭という事を隠し、裕福で仲の良い両親、兄弟と暮らす振りをする勝気な女子高生ヨニ。
父親の暴力で家庭が崩壊し、今はその父親に暴力を振るチンピラ、サンフン。
そんな二人が偶然道で出会った時、運命は動き始める。

わたしは韓国という国をよく知らないが、この映画は、韓国が抱える問題の根深さをも見せていると思った。
暴力がそんなに日常的なのか韓国人の友達に聞いたところ、貧困層が日本より多く、やはりそこでは、暴力や離婚や家庭内の問題が多いという。
儒教というお国柄、親や年長者を敬う文化がある半面、その親に暴力を振るわれたら、子供の心は相反する感情で混乱するのは当たり前だ。

子供にとっては、どんなにひどい親でも親は親、愛されたいし愛したい。
それは、日本だろうがアメリカだろうが世界共通だろうが、そこに、そのような文化背景が絡むとより複雑なものを堆積させるのだと思う。

結末は悲劇的でも描いているのは希望。
そこに監督の、一筋縄ではいかないけれど希望を失わないという前向きさが表れている。

監督のコメントにある「物語はフィクションでも、映画の中の感情に1%の嘘もない」
そう、だから私は映画が好きなんだ。

そしてこのコメント。
「『息もできない』は私自身のために作った映画です。しかし、今では私のためだけではなく、多くの皆さんと一緒に分かち合える映画になったように思えて、とても幸せです。これからも包み隠さず、果敢に表現していきます。包み隠さずに心を開くことで、より清く健全になれることを『息もできない』を通して知ったからです。」
そう、クリエイティブなんてカッコつけからは生まれない。全部吐き出してしまえばいい。