映画「正義のゆくえ I.C.E特別捜査官」

移民税関捜査局で、不法滞在者を摘発する捜査官。

一方、観光ビザで入国後、そのまま滞在を続けるオーストラリア出身の女優の卵。
滞在許可証取得のために、宗教家の振りをするミュージシャン。
家族と共に韓国から移民し、市民権を得られる直前の青年。
ムスリムとしてのアイデンティティと9.11以降の世間の誹謗中傷に挟まれる少女。

立場や民族、宗教の違い、様々なバックグラウンドを持つ人間が、暮らし、また暮らすことを望む国アメリカ。

今のアメリカが抱える問題に深く切り込み、またそれぞれの主張や生活や境遇を余すところなく伝えることに成功している、稀に見る秀作である。

表題「正義のゆくえ」に象徴されるように、何が正義で何がそうではないのか、に対する答えはない。

また、善良な人間であれば恵まれた境遇を得られる訳でもなく、たまたま見つかり強制送還になる場合もあれば、運よくグリーンカードを手に入れられる場合もある。
ちょっとしたことで家族に会えなくなる道を辿ることになるのか、はたまた市民権を得、幸せな生活を送ることになるのか。

人生とはかくも不確かなものなのか。
正義の定義も曖昧な上に、些細なことがその後の道を決めるのだ。

努力やモラルや情はもちろん大切で、その先に道が開けるのも否定できないが、最後は運命を受け入れる覚悟を持つことしか出来ることはないのかも知れない。

「正義のゆくえ I.C.E特別捜査官」
監督:ウェイン・クラマー
出演:ハリソン・フォード レイ・リオッタ アシュレイ・ジャッド 他
配給:ショウゲート