生きることについて考えさせる映画は数多くある。
これも、そんな生や死や過去について考えることになる映画の一つだ。
でも明らかに一線を画している。
映像が素晴らしい。
脳梗塞でロックトイン・シンドローム(体の自由は左目の瞬きだけ。精神は今まで通り。閉じ込め症候群)になった主人公の視点で、観ているこちら側から瞬きを通して見える世界を描いている。
自然に、瞬きしか出来ない主人公の不自由さといらだち、絶望を感じさせることに成功している。
また、北フランスの海辺の街の風や日射しなどの映像が素晴らしく、暗い中に射す希望さながらキラキラと輝き、彼の人生が浄化されてゆくかのように重なる。
人生は、長くても大切なことに気づかないままの場合もあるだろうし、短くても、終える直前にその人にとって大切な事に気づいて終えられる場合もあるだろう。
ELLE編集長の座、執筆業、子供、妻、愛人、、、人生を謳歌した最後に待っていた、最後の境地。
こういうのを見ると、やはり人生とはある種の運命というか、それは最初から決められている運命というより、その人にとって意味のある事柄が起き、本人がそれを咀嚼し味わうように出来ているような気がしてならない。
逆を返せば、どんなことが起きても、それを咀嚼し味わい新たな境地に達することが出来るのではないかと思う。
フランスの成熟した男女関係が垣間見えるのも良かった。
元妻との関係、子供との関係、愛人との関係。
子供がいようが、恋愛感情がなくなったら別れるのって日本じゃ少ないけれど、ヨーロッパ(特にフランス)はその辺潔くて実に恋愛至上主義。素晴らしい。
恋愛至上主義は、恋愛が第一優先というより、物事の本質を見ているだけなんだと思う。
愛がないのに一緒にいることが子供に対する責任なんて、そんなわけがない、と私も信じている。
瞬きで綴った著書の出版数日後に亡くなったとは。
世界31カ国で出版、フランス、イギリスでベストセラー。
これはぜひとも読んでみよう。