映画「約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語」

これは・・・期せずして、2010年度beans賞にノミネートされることとなりました。
まだ今月来月で楽しみにしている作品はいくつかありますが、最優秀作品賞かなり濃厚です。
暇だし観てみるかーなんて気持ちで観たのにびっくりです。
これはすごいわ。

葡萄造り、ワイン造りにすべてをかけた男を通して、生きてゆく上で避けて通れない「幸福と絶望」「豊作と凶作」などの表裏一体の価値観、人生観を描いた作品。

まず映像が素晴らしすぎる。
あんなに自然や昆虫や四季の空気を慈しんだカメラワークは、なかなかお目にかかれない。
映画では珍しい、被写界深度が浅い映像がたくさん使われている。
上空から映した映像も効果的に使われていて、全編を通して引き込まれる。

そして、衣装や小道具、大道具がまた素晴らしい。
ハリウッド超大作とかでも、なんだか嘘臭いなーとかやり過ぎーとか思うことがままあるが、これはまったくそういう感じを受けなかった。
特に、シャトーの女主人役の衣装は、センス良すぎですよ。
ただ時代を上手に表しているというだけではなく、衣装さんのこの映画の世界観の解釈やセンスそのものがずば抜けていいのだと思う。

観終わって気づいたが、本編で二時間越えというなかなか長い作品。
にもかかわらず、途中ダレることもなく最後まで引き付けられっぱなしだった。
堕天使役のギャスパー・ウリエル、綺麗で中性的な今回の役にぴったりだが、なにがいいって、とにかく声がものすごくいい。声でキャスティングされたんじゃないかってくらいいい。

でも内容的には好き嫌いが分かれるんだろうなぁ。途中で帰っちゃったおじさんいたし。
私は、こういう観念的な作品が大好きなので、ものすごくツボだった。
自分のストライクゾーンの中でも、「そこ投げてくる人あんまりいないんだけど、こういう球待ってたんだよねー」という感じ。

監督:ニキ・カーロ(女性)
出演:ジェレミー・レニエ「ある子供」「ロルナの祈り」「夏時間の庭」、ギャスパー・ウリエル「パリ・ジュテーム」「かげろう」、ヴェラ・ファーミガ「ディパーテッド」「マイレージ、マイライフ」